ア・トーダ・クーバ・レ・グスタ


アフロ・キューバン・オール・スターズ
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのキューバ側コーディネーターとして、大きな力を発揮したフアン・デ・マルコス・ゴンサーレスが率いるバンドがアフロ・キューバン・オールスターズです。フアン・デ・マルコスは映画『サルサ』で日本でも有名になったソン復興バンド"シエラ・マエストラ"にトレス奏者として結成時から参加していましたが、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの録音を機に、以前から発想を温めていたこのアフロ・キューバン・オールスターズを結成したそうです。このバンドのコンセプトは、20代〜70代という新旧の世代が集うバンドで「キューバ音楽の黄金時代」といわれる50年代のナンバーを中心に今の時代感覚で演奏し、キューバ音楽の過去と未来をつなぐ存在として演奏活動することです。1944年生まれのフェリクス・バロイ、1927年生まれのベテラン、マヌエル"プンティジータ"リセアの2人の男性シンガーを中心に、女性歌手テレシータ・ガルシーア・カトゥールラも加えて、一昨年、初来日公演を成功させましたが、そのステージを最期に00年12月"プンティジータ"が74歳で亡くなりました。
数年前、ライ・クーダーがプロデュースした「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の大ヒットでキューバの老音楽家たちは世界的有名人になってしまいました。ラテン人でなくとも血が騒ぐどっしりとしたグルーブ、艶っぽく人生を感じさせる深い歌声。商業的価値に振り回されることなく、1世紀近くも音楽を愛し演奏してきた人達です。彼ら関連のCDの中で、一番ぐっとくるのがこのアルバムだと思います。喜びにみちた音楽、とはまさにこのことであり、なおかつ意外に男っぽく、骨太の演奏がかっこいいです。
総合的に言えるのは、キューバ音楽っていうのは、単なる一民族の伝統音楽という固定観念を圧倒的に超えているんだと思います。まず、日本の伝統音楽のように、昔ながらのものを保存しよう、維持しようという姿勢はありません。先達の培ったノウハウを踏襲しつつ、あくまで進化を続けようとしている、その姿勢そのものがキューバ音楽なのです。ですから、欧米のポップスのような流行の要素も導入するし、ジャズの難解なテクニックも取り入れる。でも、決して流行を追い求めるのではなく、情緒的な演奏に走ることなく、白人音楽のように内省的になるのでもなく、あくまで、明るく、陽気に、とんでもないテクニックという裏付けを持ちつつ、粋な音楽を奏でるのです。同じラテン音楽でも、サンバとかブラジル系の音楽とかありますが、それらとも一線を画します。キューバ音楽の方が革新的でレベルが高い感じです。単に自分の過去聞いてきたラテン音楽は質が低かっただけだとすれば、前言撤回しますが。。。僕の直感が正しければ、ロックを初めとしたすべてのポピュラー音楽は、どんな技術革新を突き進めても、少なくとも数十年はキューバ音楽の達した水準を超えることができないでしょう。超えられるとすれば、まずロック等の音楽がキューバ音楽の優位をはっきり知り、認め、学ぶことを始めてからです。
ロックの8ビートとそれから派生したどんなリズムも、キューバのリズムの多彩さときめ細さと正確さの前では、ひどく幼稚に感じますし、ジャズのこねくり回してきた理屈も、キューバ音楽の出した明解な答えの前ではバカバカしく感じるだけです。ロックやジャズの特質として、ある種「内省的な悩み」というのが方法論として取り込まれ、美徳とされ、リスナーもそれに魅力を感じてきたのでしょうが、キューバ音楽はすべての面においてそれに否を突き付けています。そもそも悩みを持たず、思想性を持たず、純音楽としてのみ洗練を続けたきたからこそ、キューバ音楽はここまでの高みに達することができたのではないかと思うのです。ただただ美しい音楽であろうとするために、積み重ねた蓄積を重荷にせず、無駄を省いたからこそ、究極に軽くなったというわけです。
(にゃまうち)
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